「ZOZO離れ」から考えるブランド価値について

つい先日、ZOZOTOWNが提供する「ZOZOARIGATO」サービスが終了するという発表がありました。

このサービスを開始したのは2018年12月のこと。これを引き金にZOZOは各ブランドからの反発を受けていたことをご存知でしょうか?

メディアはこれを「ZOZO離れ」と表現していましたが、一部ブランドがZOZOTOWNへの出店を取りやめるような動きがありました。

僕は業界人ではありませんが、この一連の騒動から思うことがありました。

普段はこういったオピニオンを記事にすることはありませんが、ファッションに関することを発信する人間として筆をとらせて頂きたいと思います。

定性的な話になってしまうことをご容赦頂いた上で、目を通してもらえると嬉しいです。

sponsored

ZOZOARIGATOが生んだ「ZOZO離れ」

photo:via zozo.jp

「ZOZOARIGATO」は月額500円(年額3,000円)支払うことで、ZOZOTOWN内のアイテムを10%OFFで購入できるサブスクリプションサービスです。

このサービスがリリースされた当初の反響は、記憶に新しいのではないでしょうか。

サービス開始後の元日の取り扱い高が過去最高を記録するなど、ユーザーに大きなインパクトを与えました。

しかし、これを受けて出店側のブランドからの喧騒が響くようになります。

割引分はZOZO側が負担する仕組みだったのですが、自社ブランドを常に安売りされてしまうことをネガティブに捉えられてしまう結果に。

表立って批判されることはありませんでしたが、複数ブランドがサービス開始後にZOZO撤退を表明したことから、本サービスの開始が少なからず影響しているはずです。

存在しないブランドイメージ

おそらくブランド側の主張は「恒常的な安売りがブランドイメージを毀損」するというもの。ブランディングで勝負しているブランドが、このサービスをマイナスに捉えることは当然のことだと思います。

しかし、ここで少し疑問に思うことがあるのです。

そもそも「毀損されるようなブランドイメージ」が今のブランドに存在するのかということ。

現状のアパレル業界はファストファッションに淘汰されていることは明白。ユーザーが求めているものは、質ではなく価格

今や安くて良い服を買うことができるのは当たり前。品質や生産背景、ブランドにこだわって服を選ぶ僕でさえ、ファストファッションは定期的に利用します。

消費者の大半は服に対して「ブランド」を求めていないのではないでしょうか?

価格で勝負せざるを得ない業界

インターネットが普及する前、コレクションで発表されるような最先端のトレンドは、一般層に降りてくるまである程度の時間を要していました。

しかし、今ではファストファッションでも、ハイブランドさながらのデザイン服が楽しめる。このインターネット時代に、上流のブランドが独占していたトレンドが安価で手に入るようになってしまったんです。

僕はこだわったものづくりをしているブランドをたくさん知っています。しかし、残念ながらそういった服の価値を理解している人はごく僅か。

アパレルのブランド価値に納得している購買層は少ないのが現実です。

ブランド価値を啓蒙することができていない以上、今後も価格で勝負せざるを得ない状況は続くと思います。

そんな現状が、いま不況と言われるファッション業界を物語っている。服のブランド性に価値を感じてもらえないままでは、今の状況が好転することはないのだと思います。

服をコンテンツと一緒に発信する

各ブランドのデザインに差がなくなり、ブランドの価値が半減してしまった今、今後はどのように服の価値を啓蒙していく必要があるのでしょうか。

そのような感性価値を広めていく為には、コンテンツを使ってユーザーの感性や共感に訴えかける必要があります。

インターネットが普及する前はファッション誌を使ってコンテンツマーケティングが行われていましたが、今の時代にフィットするような手法で価値を啓蒙していかなくてはなりません。

SNSの発信やインフルエンサーを使ったマーケティングが当たり前となった現代。ただ闇雲に新作商品をSNSに投稿したり、インフルエンサーに服を着てもらう程度ではユーザーの感性に響かなくなっています。

完全に肌感の話ですが、ブランド性のある服はデザイナーや販売する人の顔が見えている印象が強く、その傾向は今後も加速していくと思います。

ブランドは服の作り手や売り手自身がSNSやブログ、ライブ等を通じて、服の魅力やストーリーを語り、継続的に啓蒙し続ける必要があります。

ブランドの魅力を認知したファンを定着させることで、初めてそのブランドに価値が生まれる。

服をコンテンツと一緒に継続的に発信していくことが、いま半減してしまった服のブランド価値を回復させる方法なのではないかと思います。

sponsored