デザイナーやパタンナーなど、あらゆるプロフェッショナルに手を加えられた後、洋服は店頭に並びます。
何十人もの人が関わり、完成された状態で洋服は世に出るもの。
しかし、本日ご紹介する服は最後に着る人が手を加えて完成させる、未完のシルエットが魅力のアイテムです。
CINOH/COACH JACKET
中目黒にあるBechicsというセレクトショップで購入したのはCINOH(チノ)のコーチジャケット。
ストリートをラグジュアリーに昇華させたようなアイテム。
CINOHは2008AWデビューのブランドで、メンズラインは2018SSからスタートしています。
文化服装学院を卒業の茅野誉之さんがデザイナーを務めており、緻密なパターンテクニックを用いたミニマルデザインなアイテムが特徴的。
独自の世界観を持つブランドですが、あくまで日常着としてのリアルクローズを主張しています。
パターンだけでなく素材にもこだわりを持った同ブランド。
角度によっては黒にも見える陰影のある生地は、メゾンブランドにも供給されているリモンタナイロンを使用しています。
シャリみと艶感がありながらも、耐久性高く仕上げられています。
表地に対して裏地はキュプラ。エッジの効いた赤に染め上げられており、英国紳士的な雰囲気に。
ネイビーと赤の組み合わせがまた映える。ここまでお互いに引き立て合う色の組み合わせは他にあるのでしょうか。
スナップボタンとベンチレーションホールは金属性で、より洗練された印象に整えられています。
ストリート感の強いアイテムですが、こういったディテール部分でイメージをコントロールしています。
そしてこちらのアイテムの最大の特徴は、長く土管のようにデザインされた袖。
明らかにアンバランスですが、この袖がこのコーチジャケットを見事な程に洗練させます。
着画と動画を後にも載せていますが、このジャケットは袖口のフラップで袖を巻き上げて着用します。
手首に袖を溜まらせることで袖丈の長さを調整するのですが、この変態的な仕様がまた良い。
感度高いリアルクローズ
実際に着用してみましたが、そのまま着ると手が見えない程に袖がダボダボです。
ここから自らの手を加えることでシルエットを完成させていきます。
先述したように袖のフラップをぐるっと一周させてスナップでパチンと固定。
余った袖が手首に溜まる構造にデザインされているので、袖が長くなりすぎずアームにたっぷりとボリュームが出ます。
フラップを一周させるので捻りが加わりますが、生地に捻りが加わることまで計算されているので収まり良く綺麗にまとまります。
店頭で試着する前は「なんだこの癖のある服は」と思っていたのですが、スナップをパチンと止めた瞬間その印象はすぐに覆りました。
一見、独特なフォルムですが、同ブランドが掲げているリアルクローズに沿ったプロダクト。
実際にコーディネートに落とし込んでみると、すんなりと普段のスタイルに馴染んでくれます。
着用して最後に自分でフォルムを整えて。自らの手で完成させて自らのライフスタイルに落とし込んでいく。
あえて未完のシルエットに仕上げられたアイテムです。